家族が認知症になり、成年後見制度の利用を検討するとき、最初に必要となる重要書類が「診断書」です。
しかし、いざ手続きを進めようとすると、「どこでもらえるの?」「普通の診断書とは違うの?」「費用はいくらかかる?」といった疑問や不安が出てくるのではないでしょうか。
この記事では、成年後見制度に必要な診断書の費用相場、入手方法(取得手順)、提出前にチェックすべき3つのポイントを分かりやすく解説します。
成年後見制度における「診断書」の重要性と役割

成年後見手続きにおける診断書は、単に「病名」を証明するものではありません。家庭裁判所が「本人にどれくらいの判断能力が残っているか」を客観的に判断するための最重要書類です。
なぜ普通の診断書ではダメなのか?
家庭裁判所に提出する診断書は、裁判所が指定する「専用の様式」で作成する必要があります。病院が独自に発行する一般的な診断書では受け付けてもらえないため注意が必要です。
診断書によって「後見・保佐・補助」が決まる
成年後見制度には、本人の判断能力に応じて3つの区分(タイプ)があります。
- 後見(重度): ほとんど一人で契約や財産管理ができない状態
- 保佐(中等度): 重要な取引や契約に支援が必要な状態
- 補助(軽度): 部分的な支援が必要な状態
医師が書く診断書の内容によって、どの区分で申し立てるかが決まります。
成年後見制度に必要な診断書の費用目安
診断書の発行費用や、付随して発生する費用について解説します。
診断書の発行費用
家庭裁判所用の診断書作成は保険適用外(自由診療)となることが多く、病院によって価格が異なります。
一般的な相場: 5,000円〜10,000円前後
鑑定が必要になった場合の追加費用
診断書の内容だけで判断能力の評価が難しい場合、裁判所の指示で専門医による「鑑定」が行われることがあります。その場合は別途5万円〜10万円程度の鑑定費用(実費)が必要になります。(※現在は約9割のケースで鑑定が省略されています)
診断書の費用は誰が払う?
申し立てを行う申請者(配偶者や親族など)が一度立て替えて支払うのが一般的です。
成年後見用診断書の入手方法(4つのステップ)
診断書を入手するまでの流れを4つのステップで整理しました。

ステップ1:家庭裁判所の専用様式(用紙)を用意する
診断書の用紙は、主に以下の2つの方法で手に入ります。
裁判所の公式ホームページ(裁判所:申立て手続と各種書式)から「成年後見用診断書」のPDFをダウンロードし、印刷します。
ネットで入手する場合
裁判所の公式ホームページから「成年後見用診断書」のPDFをダウンロードし、印刷します。
窓口で直接もらう場合
お近くの家庭裁判所の窓口に行けば、診断書の様式を一式(無料)でもらうことができます。印刷環境がない場合や、手続きについて直接質問したい場合は窓口での受け取りが便利です。
※医師に渡す「診断書」だけでなく、ご家族などが記入する「診断書付票(照会書)」もセットで受け取る(印刷する)ようにしましょう。
ステップ2:主治医(かかりつけ医)に作成を依頼する
本人の普段の様子や持病を理解している主治医に依頼するのがもっともスムーズです。「成年後見の手続きで家庭裁判所に提出したい」旨を伝えて用紙を渡します。
補足:併せて準備したい「本人情報シート」
診断書と一緒に「本人情報シート」を主治医に渡すのが一般的です。
これはケアマネジャーや介護施設職員などに書いてもらう書類で、普段の生活での困りごと(買い物・金銭管理のトラブルなど)を医師に正しく伝えるためのものです。 ※診断書と同じく、裁判所のホームページや窓口で入手できます。
厚生労働省:成年後見制度における「本人情報シート」の活用について
ステップ3:本人の診察・認知機能検査を受ける
医師が必要と判断した場合、長谷川式スケール(HDS-R)やMMSEなどの認知機能テストを実施します。
ステップ4:完成した診断書を受け取る
依頼から発行までは1〜2週間程度かかります。受け取ったら内容に誤りがないか確認しましょう。
かかりつけ医がいない・書いてくれない場合
精神科・心療内科・神経内科のある病院を受診して相談してみてください。
提出前に必ず確認!診断書でチェックすべき3つのポイント

受け取った診断書をそのまま提出する前に、以下の3点を必ずチェックしてください。
ポイント①:作成日(発行から3ヶ月以内のものか)
家庭裁判所に提出する診断書は、発行から3ヶ月以内のものでなければなりません。手続きに時間がかかり期限が切れてしまわないよう、提出のタイミングに合わせて取得しましょう。
ポイント②:「診断書付票」もセットになっているか
診断書と一緒に「診断書付票(本人に関する照会書)」の提出も求められます。医師が記入する部分と、親族が記入する部分があるため、記入漏れがないか確認しましょう。
ポイント③:記載内容と本人の実態に大きなズレがないか
実際の状態よりも「しっかりしている」ように書かれてしまうと、希望する後見区分(後見・保佐・補助)で認められない場合があります。気になる点があれば、提出前に医師や専門家に相談しましょう。
診断書・書類を提出した後の流れと「親族への確認」
家庭裁判所に診断書をはじめとする必要書類を提出(申立て)した後は、以下のような流れで手続きが進みます。申立てから後見人が選ばれるまでは、およそ1〜3ヶ月程度かかります。

ステップ①:家庭裁判所による書類審査・面接
提出した書類をもとに、裁判所の担当者(家裁調査官など)が内容を審査します。
その後、申立人(申請した人)や後見人候補者、本人(可能な場合)が家庭裁判所に呼び出され、申立ての経緯や本人の生活状況について面接を受けます。
ステップ②:他の親族(推定相続人など)への意向確認
裁判所は、申立て内容や後見人候補者について「他の親族が納得しているか」を確認します。
照会書の送付
本人の子供や兄弟姉妹など(推定相続人)に対し、裁判所から書面(照会書・同意書)が郵送されます。
確認される内容
「後見制度を利用することに賛成か」「候補者が後見人になることに同意するか」などが問われます。
スムーズに進めるためのコツ
申立てを行う前に、あらかじめ他の親族(兄弟など)に事情を話し、「親族の同意書」を書類提出時に一緒に添えておくと、裁判所からの問い合わせや手続きのタイムラグを減らすことができます。
「親族の同意書」は、管轄する家庭裁判所のホームページからのダウンロード、窓口での受取り、または依頼している専門家(弁護士・司法書士等)からの取り寄せによって入手できます。
親族間でもめている・反対されている場合はどうなる?
親族間で後見制度の利用や「誰が後見人になるか」についての意見が割れている場合、裁判所の手続きは通常と異なる動きになります。
「第三者後見人」が選ばれる可能性が高くなる
親族同士で対立がある場合、家庭裁判所は親族トラブルによる本人の利益損害を防ぐため、弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門家(第三者後見人)を後見人に選任する傾向が強くなります。
手続き(審理)に時間がかかる
裁判所が親族一人ひとりの意見や本人の置かれた状況をより慎重に調べるため、通常(1〜3ヶ月)よりも審理期間が長引くことがあります。
無理に親族の同意を得ようと抱え込まない
親族の同意が得られない・話し合いが難しい場合でも、申し立て自体を行うことは可能です。反対している親族がいる状況を隠さずそのまま裁判所に伝えるか、不安な場合は申し立て前に弁護士や家庭裁判所の相談窓口へ状況を共有しておきましょう。
ステップ③:精神鑑定(※必要な場合のみ)
提出した診断書だけでは本人の判断能力を評価するのが難しいと裁判所が判断した場合、専門医による「鑑定」が行われます。
※現在は約9割のケースで鑑定が省略され、診断書のみで判断されます。
ステップ④:審判(決定)と後見人の選任
すべての審理が終わると、裁判所が「審判(後見を開始し、誰を後見人にするかの決定)」を下します。申立人に「審判書」が届き、不服申し立て期間(2週間)が経過すると正式に確定します。
成年後見手続きでよくある診断書Q&A
Q. 精神科以外の医師(内科など)でも書いてもらえる?
A. 可能です。 精神科医でなくても、本人の状態をよく知っている内科の主治医であれば作成してもらえます。
Q. 発行までどのくらい期間がかかる?
A. およそ1〜2週間です。 病院の混雑状況によっては時間がかかることもあるため、早めに相談することをおすすめします。
まとめ
認知症の成年後見制度で使う診断書は、「家庭裁判所の専用用紙を準備すること」と「主治医へ早めに相談すること」が成功のポイントです。
- 専用様式を用意: 裁判所のHPか窓口で手に入れる
- 費用・期限: 5,000円〜1万円程度/有効期限は発行から3ヶ月以内
- 主治医に依頼: 「本人情報シート」も一緒に渡して普段の様子を伝える
まずは裁判所のホームページや窓口で用紙を入手し、ケアマネジャーや主治医に相談することから始めてみましょう。


